文・渡辺純子、写真・吉本美奈子
青い山と緑の田んぼを背景に、三つの水車がバサンバサンと豪快に回る。木のひしゃくが次々と川に沈み、たっぷり水を入れて上がっては、樋(とい)にざあざあと流し込む。水流という自然の力だけで水をくみ上げ、川より高い田んぼを潤す、昔ながらの水車だ。
福岡県朝倉市の三連水車は、1789年にできた。現役の揚水式水車として日本最古とされる国史跡だ。
上流から大中小と並ぶ。同じ大きさだと、物理的に動きにくいという。よく見ると、どのひしゃくも内側に少し傾く。角度は19度。これより深いと、せっかくくんだ水が樋の手前で、浅いと樋の先で落ちる。たび重なる干ばつに苦しんだ先人が筑後川に堰(せき)を築き、堀川を引き、豪快かつ精巧な水車を生んだ。古びた案内板は「朝倉の農民たちの英知」をたたえる。
観光のシンボルだが、回るのは田んぼに稲がある時期だけ。「観光施設じゃなくて農業施設なんです」と山田堰土地改良区の古賀敏雄理事長(70)は言う。維持管理をしているのは市でも県でもなく、土地改良区。つまり一帯の農家だ。
稼働中は地元の水車大工、妹川幸二さん(65)が毎朝見まわる。「24時間まわりよるっちゃけん、ちょっとしたゆるみが命取り」。がたつきがあれば水車を止めて締め直す。ひっかかった木や草もこまめに取り除く。
記事後半では、地元で人気のグルメスポット紹介や会員登録すると応募できるプレゼントもあります。8月28日(日)締め切り
5年に一度は部材を造りなお…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル